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 店に差し込む夏の日差しは容赦なく、蝉の声が風景をボンヤリとさせる様に鳴り響く夏の御昼過ぎ。

忙しない昼飯時を過ぎた店内には、書庫から引っ張り出してきた本と睨めっこをするエルとシャインドエグニスの姿がありました。

蝉の声に混じって、調理場の奥で食器を洗う音が聞こえて少し涼しげ。

と、相も変らぬティスの怒声が訓練場の方で起こって,、リチャードの歓喜の悲鳴が聞こえました。風鈴だと思えば風流なもんです←?

暫くして、恍惚とした表情とズタボロ感を引き連れてリチャードが卓の方へとやってきました。ティスを追い回すのにかまけて昼食を取っていない事にようやく気づいたからです(何)

其れから少し遅れて、ティスの説得(?)に失敗したエスパールも僅かに苦笑を浮かべながらやってきました。此方は、御茶でも少し、といった感じ。

エスパールは、本から視線を上げた二人と軽く挨拶を交わして席に着こうとした時に、ふと、店の入り口に誰かが立っている事に気が付きました。

夏の日差しの逆光を受けている其の人物の様相は判らず、ただ随分と大柄な人物であるという事だけが見てとれます。

「仕事を依頼したいのですが」

 此方に気づいたエスパールに其の人物は言いました。其の声は男の声でした。

『仕事』『依頼』という言葉に反応して他の三人も其の男の方へと視線を送ります。

「私は、さすらいのヴェーナー神官クインリ=マッケンジーと申します」

 そう名乗りながら店内に入ってきた男は、オーガの様な体格、つるっぱげのスキンヘッドに刺青(破廉恥系な真っ赤さのハートに矢が刺さっている)、そして、眉の無いいかめしい双眸と歯抜けで不敵にニヤニヤと厭らしく笑む口元、ともすれば、種もみを貧困村に持ち帰る老人を追回すならず者のボスをしていて胸に七つ傷のある男に問答無用の殺人拳を叩き込まれていそうだった。








 さて、一寸、身分を偽って冒険者の宿にお礼参りに来た悪党と間違えられかけた彼でしたが其処らへんはシッカリと納得の行く説明でもって円満に解決しました←?

曰く

芸術の肉体美。芸術のスキンヘッド。芸術の刺青。の三点セットが彼的ヴェーナー神官の証であるとの事。

そして眉毛は、剃って描いていたものが汗で流れてしまったとの事。

歯が無いのは、其の昔に観た劇『口で彫刻を掘ったチョビクリー先生{奥歯がグラグラしても君はまだいける}〜〜泣き虫先生大奮闘の感動巨編〜〜』に非常に感銘を受け、真似てみたところ見事に歯が数本欠けてしまったのだとの事。

不敵な笑みは、神官としてのスマイルを浮かべていただけなのだがホンの少し笑うことに不器用なのだとの事、でした。








「で―――依頼したい仕事というのは?」

 落ち着いた声でナリスが問い掛けました。

神殿の仕事帰り、遅い昼食を取りに店へと入ってきた時、危うく依頼人をヘビーメイスで叩き伏せるところだったのは内緒です(嘘)。

からん、と氷の落ちる音。

卓についたエスパール、エル、シャインドエグニル、リチャード、ナリス、そしてヴェーナー神官の前にはアイス香茶が置かれており、マスターがまだ洗い物の残る調理場へとトツトツ戻って行きます。

蝉の声に混じって外を通る馬車の音や井戸端会議で笑う声や子供らがキャッキャと遊ぶのが聞こえる中、ヴェーナー神官クインリは仕事の内容を話し始めました。









 話は、オランから歩きで1日程離れた所にあるチュナ村という村にクインリが立ち寄った所から始まります。

其処でクインリは妙なものを見ます。其の村にある家が数軒ほどめちゃめちゃにされており、其れはあからさまに人や自然災害による被害とは違っていたのです。

事情を聞いたところ、下の様な事をクインリは聞きました。


■チュナ村の傍にチュナグル山という山があり、其の山には山神様がいらっしゃると昔から神聖視されている。山神の祭の時の司祭者達以外は決して山に入ってはいけないと云われていた。

■7日前(今から8日前)にリュノとジニという二人の兄妹が禁を破り、山へと遊びに入った所、熊に遭遇してしまった。二人は必死に逃げて、兄のリュノの方はどうにか山を降りて村に帰ってこれたのだが、逃げている途中ではぐれてしまった妹のジニの方はとうとう帰ってこなかったのだそうだ。

■そういった事があり、リュノとジニの両親は村人の力を借りて山にジニ捜索に行こうとしたのだが、山神祭の司祭長である村長が「ならんならーん!!」的にストップを掛けた。其れでも、村人の大半が「子供の命に関わることだし」と山の捜索に力を貸してくれる事になり、其の夜(ジニが遭難した夜)に捜索が行われた。

■捜索の準備が整い、「さあ、行くぞ」と山に踏み込んだ時、熊が一斉に出没し襲い掛かってきた。なす術も無く村人達は命からがら逃げ帰ったのだった。死人はどうにか無かったが、怪我人多数。

■それでもリュノとジニの両親を始め、村人達もまだ捜索を完全に諦めたわけではありませんでした。が、6日前の夜(今から7日前の夜)村の端の数軒が熊達に襲われました。熊の仕業とは思えないほど迅速に家を破壊して、そして熊達はまた山に戻っていったのだとの事。まあ死人こそ出ていないものの、被害は大きかった。

■熊の襲撃事件によって、村人もリュノとジニの両親も神聖な山への捜索を諦めてしまった。






其処まで、話してクインリは一旦、話を区切り香茶を飲みました。

「そして、私は、神官として何か出来ないものかと怪我人の治療ついでに、リュノとジニの家に行きました。二人の両親は、大した怪我こそは無かったもののゲッソリとしてフルフルとして見てられぬほど痛々しかったのです。子を失くした親というのはなんともこう……」





■其処でリュノという少年に会った。彼は『妹は絶対にまだ生きている』と言っており、村との事で打ち悩む両親を困らせていた。

■リュノ少年の根拠は、昨日、みんなに内緒でチュナグル山の近くまで行った時に、妹の歌う声が微かに聞こえたのだという。

「きっと妹は足を怪我したりとかして動けないで居るんだ。俺達、熊に遭う前に洞窟を見つけて……其の時は入らなかったけど、もしかしたら、其処に隠れているかもしれないッ」

少年は両親や村人達にそう訴えかけましたが、誰もが首を力なく横に振るばかり。其処で、彼は一人で山に入るつもりでした。が、クインリが其れを止めました。

リュノ少年の妹想いな心意気に胸を打たれたクインリはこう言ったのです。

「世の中には金さえ払えば土着の神様なんて簡単に踏み荒らしてくれる素敵なアウトロー達が居るのです。いざとなれば、彼らを山神に捧げれば良いですし(?)
私は、昔一発当てた芸術のおかげで小金があります。一つ、其の人達を雇ってきますので、少し待っていてください」



という経緯でもって、現在に至るのです。
ちなみに、彼が一発当てた芸術というのは、ちょっと趣味がマイナー志向で知る人ぞ知るといった迷画『足攣り地獄』(思わぬところで足を攣ってしまった商人の男が、其れでも仕事をやり遂げようと頑張る姿を大胆な構図、アヴァンギャルドな色使い、致命的な狂デッサンで描いた問題作)です。セージでもって知っているかどうかチェックしても良いですよ←?


 さて、彼が提示した報酬は『前金で一人400ガメル』。経費は残念ながら払えません。
妹ジニが見つかった場合(たとえ、其れが遺体であったとしても)成功報酬として更に400ガメル。遺体の回収が不可能でも、確実に死んでいる証拠を見つけた場合も同じくです。




一通り話し終わるとクインリは全員の顔を見回しました。

そして

「山………大丈夫ですか?」

あまり屈強そうでない冒険者達を前に彼は、かくり、と首を傾げたのでした。


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