…――そしてこれは、全てが終った後のちいさなちいさな物語。


「いよっす、おはよーさん♪」
 秋にしては優しい日差し。そんな緩やかな午後の常闇通りに、明るい声がさぁっと通り抜けていった。眼前で開いた扉の中へと、その人物――パールは軽く手を上げて挨拶する。
「あ、兄ちゃんだーっ♪ さっそく遊びに来てくれたんだー♪」
 ドアを開けるなり飛び出すようにして外へ出たルークは、そのまま嬉しげにパールの周囲をくるくる回る。
「ああ、暇つぶしがてら見に来てやったさ。ちゃんとねーちゃんにしごいてもらってるか?(笑)」
「うん! やってみると魔法の勉強って結構楽しかったー♪」
 目をキラキラと輝かせて喋るその様子は、すっかり普通のお子様だ。シャドウミストの件で反省しつつもそのことで深く傷つきすぎることもなく、ちゃんと己の成長の糧に出来ているようである。
 と、室内からの優しい声音が少年の名を呼んだ。
「――ルーク? お客様なの? でしたらこちらにお通ししなさいな」
「あ、姉ちゃん! うん――」
 ルークが大きく頷いて返事をしようとした時、パールはそれを遮るように、左手に持っていた袋をすっと少年の眼前に差し出した。
「おっと、今日は残念ながら長居できねーんだ。その代わりと言っちゃなんだが、こいつを、ねーちゃんに渡しといてくれるか?」
「ん? なーにそれ?」
「そいつは開けてのお楽しみ、ってな(笑)」
「ふぅ〜ん? まぁいいや。じゃあちゃんと姉ちゃんに渡しておくね♪」
「ああ、任せたぜ(^^)」
 ずっしりと重い袋をルークに渡し、そうしてパールは用事は終ったとばかりにくるりと身体を反転させた。捻るように顔だけを相手へ向け、笑顔と共に軽く手を振る。
「んじゃな♪ 勉強も頑張れよ(^^)」
「うんっ、兄ちゃんもまた遊びに来てね〜♪ 今度はゆっくりしてってね! 姉ちゃん自慢のクッキーをご馳走するからさー♪♪」
 袋を地面に置いて、両手をぶんぶん振りながらルーク。そんな少年の見送りを背に、パールは静かに常闇通りを去っていった。


 ……心優しいハーエルからの贈り物には、今回彼が貰った報酬が入っていたという。
 『ねーちゃんの薬代に、な』――と、そう一言書かれた羊皮紙が一枚、お金と共にささやかに同封されて――…。

- fin -